2026/09/26
鍼灸翠風院 コラム
かかとの痛み、その原因は?
西洋医学・東洋医学・当院の考え方から
「朝、起きて最初の一歩がかかとに響いて痛い」「立ち仕事の後半になるとかかとがズキズキする」—— そんなお悩みがある方は少なくないと思います。かかとの痛みは、現代医学(整形外科)と東洋医学(鍼灸・漢方)とでは捉え方が大きく異なります。 今回は、西洋医学的な視点、東洋医学の古典的な考え方、そして当院が大切にしている体質重視の考え方、それぞれの視点からかかとの痛みを解説します。
西洋医学的な見解
西洋医学では、かかとの痛みは主に足の「構造」と「炎症」の問題として捉えられます。代表的な原因は次の通りです。
足底筋膜炎(そくていきんまくえん)
かかとの痛みで最も頻度が高いとされる疾患です。足の裏に張っている「足底筋膜」という膜がかかとの骨に付着する部分で、 繰り返しの牽引ストレスによって微細な損傷・炎症を起こします。朝起きて最初の一歩や、long立ち仕事の後に痛みが強くなるのが特徴で、 加齢による筋膜の柔軟性低下、偏平足やハイアーチなどの足の形、体重増加、長時間の立ち仕事やランニングなどが誘因とされます。
踵骨棘(しょうこつきょく)
足底筋膜が引っ張られ続けることで、かかとの骨にトゲ状の骨増殖(骨棘)ができることがあります。レントゲンで見つかることが多いですが、 骨棘の大きさと痛みの強さは必ずしも比例しないこともわかっています。
その他の原因
- アキレス腱付着部炎・踵骨後部滑液包炎(アキレス腱がかかとに付く部分の炎症)
- 脂肪体(かかとのクッション)の萎縮・炎症
- 疲労骨折
- 足根管症候群など神経の絞扼
- 強直性脊椎炎や痛風など、全身疾患に伴うもの
診断には触診に加え、レントゲンやエコー、必要に応じてMRIが用いられます。治療は安静・ストレッチ(特にふくらはぎと足底筋膜)・ インソールやテーピングによる負担軽減、消炎鎮痛剤、体外衝撃波治療などが中心で、多くは保存療法で改善しますが、 長引く場合は整形外科での精査をおすすめします。
東洋医学(古典)的な見解
東洋医学の古典では、かかとは単なる「局所」ではなく、体全体、特に「腎(じん)」という臓の状態を映す場所として捉えられてきました。
「腎は骨を主る」
腎は骨を生じ、髄を生ず。
――『黄帝内経』の思想に基づく古典的な理解より
東洋医学の古典的な生理観では、「腎」は生命エネルギーの根本(腎精)を蓄え、骨・髄・耳・髪など、加齢とともに衰えやすい組織を養う臓とされます。 かかとの骨(踵骨)は体重を支える要の骨であり、腎精が不足する「腎虚(じんきょ)」の状態になると、骨や骨を包む組織への栄養が行き届かず、 痛みや弱りが生じやすいと考えられてきました。特に高齢の方、出産後の女性、長時間立ち仕事などの慢性の疲労が続いている方にかかとの痛みが出やすいのは、 腎精の消耗と関連づけて説明されることが多くあります。
経絡から見たかかと
かかとの内側からふくらはぎ、太もも内側を通る「足少陰腎経(あしのしょういんじんけい)」は、まさにその名の通り「腎」に属する経絡です。 かかと周辺は腎経の走行に近く、冷えや加齢、疲労によって腎経の気血の巡りが滞ると、その経絡上にあたるかかとに痛みやこわばりが 現れやすいとされています。
「寒湿」や「瘀血」という視点
腎虚だけでなく、冷えや湿気(寒湿)が経絡に侵入して気血の流れを阻害するタイプ、長年の負担や打撲などで血の巡りが悪くなる「瘀血(おけつ)」が 関わるタイプなど、古典では痛みの性質(冷えると痛む/夕方に悪化する/刺すように痛むなど)によって、いくつかの証(病態パターン)に 分けて考えられてきました。同じ「かかとの痛み」でも、体質や状態によって捉え方が異なるのが東洋医学の特徴です。
当院の考え方(体質を重視した施術)
当院では、「痛む場所だけを診ない」ことを大きな特徴とした臨床スタイルを大切にしています。 かかとの痛みという一つの症状の背景にも、その人固有の体質(証)があると考え、次のようなプロセスで施術方針を組み立てます。
四診合参による「証」の見極め
問診はもちろん、腹診(お腹の状態を診る)・脈診・舌診・背候診(背中の状態を診る)などを組み合わせ、五臓六腑のどこに、どのような アンバランスがあるのかを丁寧に読み解きます。かかとの痛みというと東洋医学の古典では「腎」がまず思い浮かびますが、 当院では実際の体表所見を重視するため、腎だけでなく、
- ストレスや自律神経の乱れによる「肝」の失調
- 過労・思い悩みすぎによる「脾」の弱り
- 長年の負担が蓄積した「瘀血」
など、腎以外の要因が複合的に絡んでいるケースも少なくないと考え、一人ひとりの体表所見から実際の証を判断します。
鍼で経絡を通じさせ、つながる臓腑を整える
当院の鍼は、かかとという「点」だけを狙うものではありません。かかと周辺を通る経絡の滞りを鍼によって通じさせ、 さらにその経絡につながる臓腑(腎をはじめとする関連する臓腑)の働きを整えることを目的としています。 経絡が通り、臓腑の働きが整うことで、結果としてかかとの痛みも和らいでいく、という考え方です。 体質的な土台(証)が変わらないまま痛む場所だけを一時的に緩めても再発しやすいため、経絡と臓腑の両方を意識した施術を行います。 その結果、かかとだけでなく普段感じている冷えや疲れやすさ、眠りの浅さといった全身の不調まで一緒に楽になったと 感じられる患者さんもいらっしゃいます。
経過を見ながら証を組み替える
初診で立てた証は絶対のものではなく、施術のたびに体表所見を確認し、体の反応を見ながら治療方針を微調整していくのも当院の特徴です。 「なぜ今かかとが痛むのか」を、その方の体質・生活習慣・季節の影響まで含めて総合的に捉えていきます。
3つの視点のまとめ
| 視点 | かかとの痛みの捉え方 |
|---|---|
| 西洋医学 | 足底筋膜炎・踵骨棘・アキレス腱付着部炎など、構造的な炎症・損傷として局所的に評価 |
| 東洋医学(古典) | 「腎は骨を主る」という理論に基づき、腎精の不足(腎虚)や経絡の気血の滞りとして全身から捉える |
| 当院の考え方 | 四診合参で個々の証を見極め、腎に限らず関連する臓腑を含めて局所と全体を同時に調整する |
かかとの痛み、ひとりで抱えていませんか?
鍼灸翠風院では、丁寧な問診と四診合参により、痛みの背景にある体質まで含めて施術いたします。 同じ「かかとの痛み」でも、原因や体質は人それぞれ。まずはお気軽にご相談ください。